<「気持ちのことば」で共感>


お子さんがなにか失敗したとします。みなさんはどんな風に対応していますか。


”あー、なにやっているの?” ”注意しなさいってあれほど言ったでしょ!” ”ばかだねっ!”


怒りにまかせてお子さんを責めていませんか。お子さんはしょんぼり。お子さんが小さいときには、お父さんやお母さんの「怒り」を恐れてお子さんはとりあえず言うことを聞くかもしれません。お父さん、お母さんが怖いので「ごめんなさい」ととりあえず素直に謝るかもしれません。しかし、小学校高学年以降になると通常「反抗期」がやってきます。お子さんは親をにらみかえしたり、口答えをして自分が失敗した行動については反省の色を見せないことも増えてきます。そうすると親御さんはよけいに腹が立ってきて、またどうしていいか分からずにあせって子どもさんをまた責める・・・子どもさんは反抗する・・・という悪循環に陥ります。


こんなとき、どうしたらいいのでしょうか。


子どもさんを含めてどんな人間も「自分の気持ちや考えを他の人に分かって欲しい」という欲求があります。お子さんは親御さんに自分の気持ちや考えを理解して欲しいと強く望んでいます。お子さんの気持ち、考えを理解してあげることばをかけてあげると、不思議とお子さんは落ち着きます。


”お水がこぼれてびっくりしたね。うまくいかなくてがっかりしたね。怒ってるんだね。壊れちゃって残念だったね。けがをしなかった?汚れなかった?大丈夫?思ったようなテストの点数でなくてあせったのかしら。大丈夫だよ。けががなくてよかったわ。”等。


子どもは「考え」も「気持ち」も両方分かって欲しいけれど、特に「気持ち」を理解してもらえればとても嬉しいし、それだけで心がずっと落ち着きます。「気持ち」は、「心地よい気持ち」と「心地わるい気持ち」の二つに分かれます。「心地よい気持ち」は、しあわせだ、平和だ、ほのぼのしている、のんきだ、ゆったりしている、満ち足りているというようなことばで表現できます。また、「心地わるい気持ち」というのは、いらいらしている、怒っている、激怒している、不満だ、不幸せだ、うっとおしいというように。


親御さんに言葉で気持ちを表現してもらえると、子どもは自分の気持ちを理解し、心を落ち着かせて自分自身をなだめることができるようになります。内心で「あー、そうなんだ、ぼくは怒っているんだぞー」「そうなんだよ、うまくいかなくて私もあせっているのよぉ」と自分の心の動きを理解できるようになります。気持ちをmanagement管理できるようになります。


皆さんはご自分の気持ちを上記のような「気持ちのことば」を使って的確に表現できていますか。私たち日本人は気持ちをことばにすることにあまり慣れていません。「気持ちを顔に出すことは、はしたない」という文化的価値観が根強いからです。「気持ちのことば」を使わずにブツブツと文句を言っていることを気持ちを表現できていると勘違いしていらしゃる方もたくさんいます。ブツブツ言っているだけでは気持ちが相手に的確に伝わらないので、問題の根本解決には至りません。


気持ちを健康的に表現できないと心にイライラがたまって爆発して暴言を吐いたり暴力を振るったり、内に秘めて気持ちがふさいだり、体の弱いところに出ると体の病気になったりします。また、自分の気持ちが分からないと相手の気持ちに共感することができないので、人との関係がうまくいかなくなります。私はカウンセリングでこういった方たちにたくさんお会いしています。気持ちをことばにするのは得意ではないということは、日本人に共通した弱点だと私は思います。この点はアメリカ人とかなり違います。過去、私自身もこの弱点で苦しんでいました。


私は、たくさんの日本人の方にカウンセリングをさせていただいている経験を通して、効果的な子育ての鍵は、気持ちをことばにしてたくさんお子さんに返してあげることだと信じています。お子さんはお母さんやお父さんから気持ちのことばをたくさん使ってお手伝いしてもらわないと、自分の気持ちが分かるようになりません。お子さんの気持ちを表現することを効果的にお手伝いするためには、まず第一に、お父さん、お母さんがご自分の気持ちを健康的にことばで表現できるようになることが大切です。


ご自分の気持ちを「気持ちのことば」で健康的に表現できていますか。また、お子さんの気持ちを「気持ちのことば」で表現することをお手伝いできていますか。練習すればきっとうまくできるようになると思います。この練習をしてみようと思われる方は是非カウンセリングにいらしてください。

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